先週の事になりますが、8月11日と12日に三五夜の葉月の月釜を開きました。
今年も出張料理人の牧田旬加( @jun.ka1012 )さんに、夏の暑さを乗り切るお料理付きの茶会としました。
今回は奈良の三輪素麺を使った鱧そうめんと、お菓子も牧田さんがその場です作る吉野本葛を使った葛切りをカウンターで召し上がっていただき、その後お茶室にて、お濃茶(各服点て)、干菓子、薄茶のコースです。
牧田さんは、三五夜の茶事や初釜のお雑煮で美味しい料理を毎回作ってくださり毎回大好評ですが、今回も鱧を使ったさっぱりとした素麺は大変好評でした。葛切りも出来立てを手際よく作って出したので、食べ応えのある弾力感も損なわれずに美味しく召し上がっていただけたようです。
本席の床の掛け物は『雲悠々水潺々』、金峰山寺管領五條順教筆となります。吉野山にある蔵王堂は、この金峯山寺の「山下の本堂」で、「山上の本堂」は山上ヶ岳の頂上にあります。本尊は有名な蔵王権現です。
修験道で有名な大峯詣りはこの山上ヶ岳に登拝(今も女人禁制)するのですが、平安時代の寛弘4年(1007年)に、今放映中の大河ドラマ『光る君へ』でも話題の藤原道長が登っています。時の権力者で貴族である道長が、あの険しい山道を登ったとは俄かに想像できないのですが、自身の日記『御堂関白記』にもその記述が見えます。
それによると、8月2日に平安京を出発し、3日な奈良の大安寺に宿泊、その後8月11日に頂上に辿り着き、自らの手で写経した経巻を金銅製の経筒に入れ埋納しています。
大峯詣りの霊験あらたかなのか、翌年には道長の娘の中宮彰子は待望の皇子を産み、道長の権力基盤は盤石となります。その後は2人の孫が天皇として即位し「この世ばわが世とぞおもう望月の欠けたることの無しと思えば」と詠む栄耀栄華を極める事になります。
約千年前に道長一行が三五夜の近くを通って吉野まで行き、頂上に着いた同じ日に吉野に因んだ設えで茶会ができた事にとても感慨深く思います。
暑い中お越しいただきました皆様、美味しい料理を毎回出してくださる牧田さん、そしてお茶席のお手伝いをしてくださいましたMさん本当にありがとうございました。
9月は日程の都合上、小寄せの月釜はお休みとなりますが、10月27日(日)、28日(月)は、名古屋の古美術収集家で陶芸家の古橋尚先生がお茶席を持ってくださいます。昨年度までは白州正子にちなむ数々のエピソードを交えた趣向でしたが、今年は「源氏物語」にスポットを当てて独特の世界観を展開されるようです。
ぜひそちらも楽しみにお越しください。