『曜変天目の美』講演会&茶会無事終了しました。本当に多くの人々にご参加いただきありがとうございました。今年話題の曜変天目のしかも長江惣吉氏をお呼びして、科学的分析に基づく研究成果とご自身の作品を展示してのお話しに、皆さん真剣に聞き入っていました。
また、茶会では長江氏制作の様々な光彩を放つ天目茶碗を使っての濃茶席を楽しんでいただきました。参加された方々は茶碗を手にとって口に運ぶ事にとても感激されていました。
床の間の飾りも、軸は明治の華族近衛篤麿公爵の漢詩に盆石を置き、台天目共に唐物世界の雰囲気を漂わせるお席となりました。
近衛篤麿公爵は春日大社の宮司だった水谷川忠麿男爵の実父でもあり奈良の三五夜の茶席で掛けるのにこれほど相応しい掛け物はないとわざわざ、名古屋から盆石とともにお持ちいただきました。篤麿の長男は、公爵内閣総理大臣近衛文麿ですね。
内容は晩唐の詩人張祜作の「弧山寺」を近衛篤麿が書したものです。
樓台聳碧岑 一徑入湖心 不雨山長潤 無雲水自陰。
斷橋荒蘚澀 空院落花深 猶憶西窗月 鐘聲在北林 霞翁
楼閣は緑の山頂に聳え 一筋の道が湖心に分け入る
雨が降らなくとも山は常に潤っており 雲もないのに水面は自ずからからかげる
断橋には荒涼たる苔が一面に蔓延り ひっそりした中庭には花びらが深く散り積もっている
今もなお思い出す、かつて西の窓辺に夜を過ごしたとき 北林より鐘の音が響いてきたのを
盆石は讃岐石(サヌカイト)を中国の山にみたて、そこに岐阜県産の菊花石を。菊は日本の象徴として。天目茶碗が遠く中国から請来したものであることを表すようにしています。
これほどの茶碗と設えでこのような講演会と茶席ができたことは、三五夜にとって大きな意味があります。
ご参加いただいた皆様、長江先生、美術評論家の古橋尚先生、お点前をしていただいた表千家教授の堂後先生、社中のAさん、ありがとうございました。