そそろそ纏めないと次の話題にいけないので、もう2週間前になりますが、東京出張の事を書いておきます。個人的備忘録みたいなものなので、あまり面白い話題ではないかもしれません。
今回の出張の目的は、次のプランに向けての打ち合わせ。三五夜の今後の方向性も含めて関係の方々にご意見伺う事、また東京での営業活動、そして、この秋公開されているお茶関係の展覧会に各美術館を回る。この3点セット。打ち合わせする関係者だけでも複数いる中、三五夜に興味を持っていただいているsnsでお繋がりにある人々にリアルにお会いして三五夜の説明をし、その間に美術館を回ってと、いつものように4日間の東京滞在中に分刻みのスケジュールを組みこみました。
深夜に奈良を出発し、早朝新宿着。そのまま新宿行きつけの喫茶店で、朝一番出社前の友人とランチミーティングならぬモーニングミーティング。メールやネットの確認をし(ここは無料Wi-FiやACコンセントがあるので重宝します。しかも24時間営業!ネットカフェではない本格的なコーヒーが飲める珈琲店が24時間営業とはさすが東京w)、久しぶりの友人との再会から東京第一歩がはじまりました。
そのあとは、新宿から山手線で渋谷、東急田園都市線で二子玉川へ。東京で働いていた時は、最後の2年は何度も来たこの街。前に関係していたアパレルブランドの店はもう無くなっていましたが、街の様子は依然と変わらず綺麗で洗練された街並み。二子玉川高島屋の裏手は高級住宅街ですが、天気も良いので、久しぶりに歩いて静嘉堂文庫美術館に行ってきました。今期間の展示は『入門 墨の美術』のとことで、岩崎家が収集した、古写経、古筆切、水墨画などの展示でした。そちらの展示はまあまあといえば、まあまでしたが、驚いたのはラウンジ展示の新関コレクションの印材の天使、こりらの印材の展示は撮影可能でしたが、西太后が李鴻章に送ったという田黄は見たこともない大きさで、龍と鳳凰のレリーフが美しい正に王者の風格を備える逸品でした。解説によると、高さ約10cm、重さが600gに近い、破格の大きさを誇るこの田黄は、田黄の愛好家として知られる大佛次郎も一目して言葉を失ったというエピソードをもつものだそうです。文房四宝には入らないですが、印材などの石は中華文明にとって特別な存在だとつくづく感じました。岩崎家霊廟もお気に入りの場所です。
◆田黄龍鳳凰文薄意印材[寿山石]:清時代(新関欣哉氏寄贈品)
◆岩崎家霊廟(ジョサイヤ・コンドル設計)明治43年(1910)築
さて、二子玉川を後にして、溝ノ口でJR南武線に乗り換え川崎まで。川崎にすんでいる以前入っていた、黄檗東本流の煎茶道をやっていたお知り合いの家を訪問しました。そこで、親しく歓談にたのち思わぬ偶然が重なって日曜日の予定がきまりました。
川崎を後に、次は新橋で降り銀座へ。銀座の画廊「美の起源」で開催中の「モノクローム展」行ってきました。奈良在住の切り絵作家の石賀 直之 (Ishiga Naoyuki)さんと、以前同じ会社に在籍していて、今は作家として活動しているYuta Okudaさん。それぞれに特色ある作品を観ることができました(終了)。
なお、石賀さんは今月30日(水)~11月4日(月)まで、山形の切り絵作家ゆうき慧真さんと裏原宿のガレリア表参道原宿さんで二人展を開催されます。そちらも是非ご覧ください。
その後、新装オープンした香舗の松栄堂東京店など銀座界隈の気になる店を駆け足で巡って、日本橋のカクテルワークス東京へ、snsで何度かやり取りしてて是非おうかがいしてみたいと思っていた宮澤英治さんの営むお店です。こちらでは、オリジナルのカクテルの種類が豊富。神保町のお店は最近流行のクラフトジンの種類が豊富との事。宮澤さんは当日はスコットランド出張中でご不在でしたが、店長にご連絡が入っており短時間でしたかお話しさせていただきました。
日本橋といっても東京駅にほど近い丸善の裏でしたので、そのまま歩いて東京駅まで、そこから飯田橋までJRで行き会社終わりの友人を待つ(朝の友人とは別です)。その日と次の日はその友人宅に泊めて頂くことになっていましたので、夕食を自宅近辺で食べて第一日目は終了しました。
二日目は銀座五丁目の中華料理店にて11時半待ち合わせ。三五夜にもお母さまとご一緒に来て頂いたこともある友人とお母さまの三人でお話ししながら会食後、日本橋高島屋で開催中の山村御流東京華展、お知り合いのお母様が山村でお稽古されているので、ご一緒いたしました。山村御流は奈良の尼門跡円照寺を発祥とし皇室とも御縁の深いいけばなの流派で、三五夜でも山村御流の華道教室を開いておりますが、奈良展、大阪展、京都展とことごとく拝観出来なかったので今回、ようやく見ることができてよかったです。
ご案内してくださいましたMさん、お母様ありがとうございました。
また、いけばな展ととなじフロアで開催中の「美と、美と、美。資生堂のスタイル」展も見ることができました。実は、三五夜のロゴデザインを考えていただいたとき、お願いしたアートディレクターのM氏が山名文夫のロゴデザインがお好きで、そこから三五夜のロゴのインスピレーションを受けたのとの事をお聞きしていましたので、今日偶然にも山名氏のお仕事の一端を拝見できてとてもご縁を感じました。その他にも雑誌「花椿」のバックナンバーを展覧した空間など資生堂が作りあげた世界観を堪能出来る展覧会でした。今回はそのアートディレクターさんとは都合が合わずご一緒できませんでしたが、見ていただけたかな?
次の目的へ。日本橋から地下鉄に乗り込み六本木一丁目で降りる。泉屋博古館東京分館で開催中の『文化財よ、永遠に』展へ。住友財団が手掛けた美術品の修復の展覧会。15時からのギャラリートークへ滑り込みセーフ。中国絵画がご専攻の東京大学板倉聖哲先生のお話しをうかがいに。トーク会終了後、板倉先生から「広島県立美術館の『浅野家の至宝』を是非、これだけの量の中国絵画が集まるのは今後10年は無い、そして裂地も」とおススメされました(10月20日まで)。
時間が無い!というか朝から歩き詰めで疲れたのもありますが、六本木一丁目からタクシー(1メーター)で六本木ミッドタウンのサントリー美術館へ。『黄瀬戸 瀬戸黒 志野 織部-美濃の茶陶』黄瀬戸、瀬戸黒と称され物は実は戦国から安土桃山期、美濃国多治見市付近で焼かれていたものだという事は、先日三五夜で曜変天目茶会の講演会をしてくださった永江惣吉さんを瀬戸に訪ねた時にお聞きしてましたが、桃山期の美濃陶の展覧会としてとても勉強になりました。
前日は新宿で仲間が集まって終電直前の電車で友人宅に泊まり、第三日目は9時半に川崎大師駅で待ち合わせ。金曜偶然にも知ることになった川崎市民煎茶会に参席しました。ここでは、東京にいた時代(まだその時は流派にも属していましたが)何度もお手前したことのある、川崎大師平間寺の中書院。
懐かしの場所で、お久しぶりにお稽古付けて頂いていた先生や、まだお稽古続けていらっしゃる社中の皆様など懐かしいお方に沢山出会う事が出来ました。そして、煎茶道のお手前で頂く玉露に煎茶。当日は雨との予報もありましたが、雨も降らず秋の一日を煎茶会で楽しめたのは数年ぶりなのでとても良かったです。
川崎から京急で相互乗り入れしている浅草線を乗り継ぎ日本橋まで引き返し、この後三井記念美術館の『茶の湯の名碗 高麗茶碗』展へ。茶碗ばかりの展覧かとはすごいと思いながら、朝鮮から舶来の高麗茶碗「三島」「刷毛目」「無地刷毛目」「粉引」「堅手」「雨漏手」「井戸」「蕎麦手」「斗々屋」「熊川(こもがわ)」「玉子手」「呉器」など侘び茶の真髄のような名物茶碗を見て回り圧巻の展覧会でした。
sの夜は新宿で泊まり夜遅くまで友人と話していたこともあり、翌朝はゆっくりとチェックアウトし、午後からお約束していた他流ですが東京でご活躍の煎茶道の先生とお会いするために表参道まで。お約束まで時間があったので、東京時代から好きなブランドであるmatohu [まとふ]さんの原宿のお店にお邪魔しました。コレクション前でデザイナーの堀畑さん、関口さんはご不在でしたが、お店のスタッフさんといろいろお話しを伺ったり、店内の服を見て回ったり、堀畑さんが毎日生けていらっしゃるいけばなを鑑賞したり、午後の優雅な時間をすごさせていただきました。
堀畑裕之さんは、大学では哲学を専攻されてその後文化服装学院からファッションの世界にはいったこともあり、ファッションのお話しも思索に富みお話がとても面白い、そのお話は最近本となりました。『言葉の服 おしゃれと気づきの哲学』。まだ、手元には届いてないのですが、店内でも販売しています。面白い本ですので、是非読んでみて下さい。
そして今回最後の目的地。そして今回最も行きたかったお店。茶道宗和流家元の宇田川 真紀雄 (Makio Udagawa)さんが新しい感覚で作ったお茶と料理、お酒を楽しめる空間『即今』で行われた「能と八寸の会」に行ってきました。茶事での茶懐石の八寸では、千鳥の儀式とともに客に謡いやその他芸能を所望されることがありますが、それを観世流シテ方能楽師の武田友志先生に能楽の解説をしていただき、実際に「高砂」の一部を皆でうたってみるというもの、武田先生の仕舞も間近でみることかできました。千鳥の儀式は茶事の中でもなかなか難しいのですが、今回は楽しく飲みましょって感じで、宇田川宗匠・武田先生はじめご同席の皆様と楽しく会話できました。その後は宇田川宗匠直々に小間の茶室ニ席もご案内いただけました。茶事の垣根を低くしてもっと今の人々に親しみやすくする即今のような空間は、三五夜にとってもとても参考になりました。
この後、宇田川宗匠には即今にある小間も茶室『笊蘺庵』(長三畳+@)と、『即今』(三畳台目)も特別に見せていただきました。ここでお茶を味わってみたいですね。とてもよいお店でした。
多くの方と新しいお出会いができ、楽しく謡や八寸の作法でお酒を楽しみ、帰りの時間が惜しまれましたが、表参道から新宿までタクシーに乗ってギリギリセーフで京王プラザホテルまで。4日間に渡った濃密な東京滞在を終えて奈良に向かいました。