初煎会のお菓子


 現在開催中の『三五夜の初煎会』で使用しているお菓子は、お正月に相応しいものという事で、主菓子には奈良の和菓子の老舗鶴屋徳満製の「花びら餅」を使っております。

 花びら餅とは、白餅を丸く平らに延ばして赤い小豆汁で染めた菱形の薄い餅を重ね、中に甘く煮たふくさ牛蒡(ゴボウ)を白味噌の餡にのせて、半月型に仕上げたもので、古くは平安時代の宮中で行われた「歯固めの儀」に由来するものともいわれる京都の伝統的なお菓子です。また宮中雑煮と呼ばれた餅の中に食品を包んだものの原型だともいわれています。牛蒡を押し鮎に、餅と白味噌餡を雑煮に、それぞれ見立てているのです。京都のお雑煮は白味噌仕立てであることを考えれば、お雑煮と花びら餅の関連は深いものが考えられます。
それを明治時代に裏千家十一代家元玄々斎が初釜で使うようになり、新年のお菓子として、全国の和菓子屋でも作られるようになりました。今の花びら餅は餅ではなく求肥(ぎゅうひ:もち粉を砂糖と水で溶いて固めたもの)で中味を包んで中の紅色はうっすらと透けて見えるようになっていますが、お正月気分華やかなお菓子だといえます。奈良の鶴屋徳満さんは元旦から営業しており、花びら餅も販売していますとのことでしたので、初煎のお菓子として用いることにしました。

 鶴屋徳萬さんの花びら餅に使われる牛蒡は、大和野菜の一つ「宇陀の金ごぼう」というものです。宇陀地方は土質に雲母(きら)が含まれているらしく、地中で生えた牛蒡は抜き取った時に陽に照らされてキラキラと光るそうです、そこから「金ごぼう」の名前が来たとの事。まことにお正月のお目出たい雰囲気にもピッタリな大和野菜です。

 花びら餅を使うのはよいのですが、今回の初煎茶会は最高級玉露をお淹れしていますで、第一煎目では凝縮した玉露のエキスをほんの少しだけ茶碗に出します。第二煎目以降も同様に少し湯の温度を上げて量はそんなに多くありません。お抹茶と違って煎茶では第一煎目と第二煎目にお菓子を食べることになっていmすので、花びら餅では少し分量も味わいもバランスを欠いてしまいます。そこで、お茶は第四煎までお淹れして(その時は熱湯を注いで、茶碗も筒形のものに替え茶の量もたっぷりと)お出ししました。その間の口休めのお菓子は、同じく鶴屋徳満さんの「奈良の香」という煎餅にいたしました。器は東大寺古材を再利用した折敷形の銘々皿に「花びら餅」と「奈良の香」を添えてお出ししました。

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 煎茶のスッキリとした味わいを楽しむ工夫を三五夜流にアレンジして初煎の手前といたしました。煎茶は同じ茶葉でも何煎でも淹れることができ、またその都度味わいが変わっていくのが、一度飲んでしまえば御仕舞のお抹茶と違う箇所です。実が最後の第四煎は本来はお客様にお出しするものではなく、茶会のあとなどに残った茶葉を最後まで使い切るため淹れた者たちが飲むものです。出がらしといってしまえば、出がらしなのですが、熱湯を淹れじっくり抽出してから淹れて飲むと上煎茶にも勝るとも劣らない甘い本当に美味しいお茶をたっぷり飲むおとが出来ます。

 花びら餅のボリューム感とそのふくよかな味わいを楽しむのにこの順序で、お客様にも召し上がっていただきましたが、「玉露を最後まで余すととこなく楽しめた」とたいへん好評でした。