11月24日に開催しました『雅楽の調べと特別煎茶会』無事終了しました。今回は、企画から準備、開催実施まで事実上一人でしたので、無事終了できたことが何より嬉しく感無量です。
事の起こりは9月23日、平城宮跡のいざない館で天理大学雅楽部OBの皆さんで構成されるANDBEXT様の雅楽ユニット「うたまいのつかさ」の雅楽体験会に行った際、雅楽エクスペリエンスとして各所で雅楽演奏の活動をされているとお話しをうかがって、ぜひ三五夜で演奏を実現したいと思ったのが始まりでした。そこから、ANDNEXTの御担当辻村様に実際に三五夜に来ていただき下見、打ち合わせを重ねてまいりました。
テーマも最初から、天皇陛下の即位の御大礼と大嘗祭の斎行を慶祝するものと決めていました。曲目もそれに沿ったものでお願いしますと、辻村様に意向を伝えて選考を依頼しました。曲選考ではかなり満足のいくもので決定できました。もう一度今回の曲目をご紹介しておきます。
【雅楽曲目紹介】
1『萬歳楽』天皇即位の儀の際に、太平楽とともに必ず使用される曲。即位の儀の際は舞楽だが、今回は三管で舞楽吹きとなります。
2『嘉辰』朗詠(漢詩に旋律をつけて歌うもの)。歌詞に、「令和」に引用もされた「嘉辰令月」と出てきます。歌詞の内容もよろこびの句です。
3『君が代』国歌。和漢朗詠集に載る祝いの歌として、嘉辰と君が代が有名です。今回は雅楽の演奏でお聴きいただきます。
4『長慶子』雅楽演奏の最後にこの曲をやるのが昔からの習わしです。
演奏は八畳間(京間で七尺床がありほぼ十畳に匹敵する大きさ)ですので、コンサートホールで聴くよりも圧倒的に大音量。室内で雅楽を聴く体験などほとんど無い機会だったと思います。それでも、耳をつんざくという感じではなく、笙の美しい和音、篳篥の力強い音色、竜笛の雅やかなメロディーなど楽器の持つ性格を間近に体験していただけたようです。
演奏会の後には、楽人さんに残っていただき休憩とお茶の準備の間にフリートークの時間を設けました。普段、大きなホールなどで演奏を聴いても実際に楽器に触れたり、お話しを聞いたりする時間はないので、皆さん思い思いの疑問や試し吹きに挑戦されたりしていました。この時間も、今回の企画ならではの時間でしたので、私から要望しましたが「うたまいのつかさ」の皆さんも快く引き受けて下さり大変盛り上がりました。
煎茶会では、慶祝に相応しい道具立てとお茶、お菓子に拘りました。お茶は丸久小山園の全国品評会受賞玉露『久誉』、お菓子は奈良の上生菓子屋さんで特別にお願いして作っていただきました、白いキントン(中身も白あん)に銀箔を散らしてもらいました。これは、大嘗祭の時、天皇陛下はお召しになる「帛の御袍(はくのごほう)」をイメージしていただけるように、銘も『帛(はく)』としました。帛とは、白絹地の事を指し「帛の御袍」は大嘗祭はじめ新嘗祭などの重要神事で天皇陛下だけがお召しになる御装束です。また、煎茶棚は「東雲棚」を用いました。これは、三重の棚で棚を支える四隅の柱に雲のような飾り付けがあることから、正月など目出度い時に使われる棚となっています。涼炉は初代三国丹祐の三峯炉に煎茶家坂田習軒が線刻したもの、急須は井上春峰の万歴五彩、飾り絹式に金更紗、茶入れは古錫(内蓋付)、仙媒には早蕨の螺鈿細工のはいった真塗のものを使い、華やかに仕立てました。
また、花はいつも三五夜でいけばな教室を開催していただいている、山村御流の小山佳節先生に生けていただきました。金砂子に白菊の文様の入った小箱に、吉祥草(キッショウソウ)、数珠珊瑚樹(ジュズサンゴ)、橙々(ダイダイ)と、お目出たい草実で山村御流らしい清楚ないけばなを床の間に飾りました。
お席の後に、楽人の御三人さんに残っていただき本日淹れた玉露も召し上がっていただきました。
三五夜二階八畳の座敷で繰り広げられた王朝絵巻の如き煎茶会。撮影にはプロカメラマンでいけばな大和未生流の師範でもある中村 タカユキ (Takayuki Nakamura) さんにお願いしイベントの様子も撮っていただきました。動画も撮っていただきましたので、後日出来上がりましブログでもご紹介したいと思います。
今回は夢の企画を実現できて、本当によかったと思います。雅楽ユニット「うたまいのつかさ」の楽人はじめANDNEXTの安藤様、辻村様、山村御流の小山佳節先生、カメラマンの中村タカユキさん、そしてご参加下さいました皆様本当に有難うございました!また、このような雅楽演奏会が出来ればと思います。