昨日は無事に「三五夜の水無月の月釜」終了いたしました。毎度文書が長くなりますので、冒頭にて今回もお越しなられたお客様にはありがとうございましたと感謝いたします。
さて今回も、密を避けるという意味から、二回八畳の部屋を茶席とし、一階を待合として、広間での小寄せを一日三席設けてました。
今回の水無月の月釜は、夏越しの大祓も近く、関西では、外郎地に小豆をかけたその名も「水無月」というお菓子を食べますので、主菓子はもちろんそれ。では、どこにしようかというのでは、以前からずっと使わせてもらいたかった、奈良の「おくた」さんの水無月を店主のご快諾を得ることができ今回使わせていただきました。 「おくた」さんの水無月は、大変大きい事で有名です。今年はコロナ騒動があり、ようやく第1波がおさまったとはいえまだまだ油断ならない現在、大きな水無月のパワーをお借りして、お客様に今年下半期の厄災を祓って頂こうと思いました。店主さんと打ち合わせしている時にお聞きしたのですが、この水無月は素材は、素材は厳選した丹波大納言を用い、外郎には奈良の黒川家の吉野本葛を混ぜ、奈良の天然水を用いているとの事(おくたさんの和菓子作りにはどれのこの奈良の天然水を用いておられるようです)。黒川本店の吉野本葛は実は、昭和天皇が崩御される前のご闘病中、だんだん体力が無くなって噛む事も出来なくなって以降お口から召し上がられた食べ物(葛根湯)で、吉野本葛でも最上級とされるものです。
また、「おくた」さんの水無月は、各界でも人気のあるお菓子でもあります。おくたさんのお店にも、各界著名人の皆様がよく訪れお菓子を食べて帰る事もある一般にはなかなか知っている事も少なく隠れた名店でもあります。
また干菓子は鶴屋八幡の小豆煎餅に、大阪四天王寺前の川藤さんで求めた、短冊型の落雁、五色の小さなゼリーを銀箔の干菓子盆に乗せて七夕趣向の三種盛りとしました。
本席床には、久田尋牛斎宗匠の短冊『銀河花外轉』、花はお点前の有本 昌史さんの趣向で、釣り花鎖を天の川に見立て、釣り花器を二つ置く事も厭わず織姫と彦星の逢瀬を演出しました。また、脇棚には有本さんが袋師でも事から師匠の堂後先生( @kibunegiku1008 )からご依頼の、井伊宗観(直弼)好みの十二ヶ月棗に御物袋として仕立てた仕覆を並べ、そのうちの一つ六月の尻張棗を薄器に使いました。順序が逆になりましたが、濃茶器は、磁州窯で近年に作られた堆線の茶器、これは現在東洋陶磁美術館でで開催中の展示品によく似た焼き物があった事から(ちょうど昨年三五夜で開催した長江惣吉氏の曜変天目茶会で使わせていただいた曜変天目も展示中)、そのうちオマージュも含めてとの事でした。
待合の掛物には、山本紅雲画の鯛図、飾りには琵琶香合と、私が今用いている篳篥を、徳川美術館蔵の秀吉着用の能衣装の復元桐金蘭地袱紗を敷いて、吉野実城寺の朱の四脚盆には、奈良の鹿毛を用いた五色筆と紙の梶葉と五色色で、乞巧奠を思わせる室礼としました。
待合で差し上げる香煎は暑い時分ですので、梅のシロップを炭酸で割ったものを様々盃でお出ししました。
お点前をいつもしてくださっている、同じ堂後茶道教室社中の有本さんが会記を作って下さいました。
『七夕と乞巧奠、無病息災の茶会』
待合
掛物 海の幸 山本紅雲画
朱盆に梶の葉と筆
篳篥と琵琶香合
太閤殿下能衣装袴裂帛紗シキテ
香煎
お選び汲み出しに青梅の香
本席
掛物 銀河花外転 尋牛斎筆
香合 瑠璃釉鳥香合
花 紫陽花 シモツケ 藤空木 月星草
花入
竹 釣船花入
黄瀬戸 釣船入
花鎖 天の河にミタテ
書院
含水水晶
脇床
井伊宗観好 十二ヶ月棗 袋カケテ
棚 碌々斎好 青漆爪紅糸巻棚
釜 朝鮮風炉
水指 鬼桶 保庭楽入作
風炉先 独楽繋腰風炉先
茶入 磁州窯椎線耳付唐物茶入
袋 雨流間道
帛紗 日月星雲紋緞子 友湖
茶器 井伊宗観好 十二ヶ月棗より 長月 女郎花に鵲 尻張棗 宗悦作
茶杓 瑞宝院 昌道和尚 銘 天の河 筒箱共
茶碗 熊川写 銘 明星 兼中斎 共箱
替 馬盥掛け分け茶碗
替 仁清蛍絵茶碗 箱 佐保川の歌
菓子器 東大寺杉生地銘々皿
干菓子盆 銀波盆
濃茶 金輪 丸久小山園詰
薄茶 久玄 同
菓子 水無月 おくた製
干菓子 三種盛
香 沈香 ベトナム渡
説明が長くなりましたが、今回もまた広々としたお部屋で、明るく和やかに、毎回来られる方もお久しぶりにお会いする方も、初めて三五夜にお越しになられた方も和気藹々と、楽しいひと時を過ごしていただけた事と思います。「これだけの室礼を考えて一日だけで終わるのはもったい、もっと多くの人に見てもらったら良いのでは」、「奈良にまた一つ良い隠れ家見つけました」などと、大変もったいなくも有り難いお言葉も頂き、道具は決して目を見張るようなものはないですが、一生懸命心を込めてお客様をお迎えする事を考える事の大切さを改めて感じ、たとえ一ヶ月一日三席でお越しになられるお客様が限られてしまっても、則を越えず分をわきまえ工夫を凝らすとお客様にも心が通じるのだと強く思いました。
三席目のお客様もおざかんの許す限りお席を離れ難い感じでお部屋にとどまり今日お会いになられた方々と親しく会話されているので、誠の七夕らしく一期一会の逢瀬を楽しんでくださいました。
さて、昨日の跡見では監修に入っていただいている表千家教授で堂後茶道教室、また三五夜のプレミアム茶道教室でも講師に来ていただいている師匠の堂後宗邑先生がご褒美で濃茶を練って下さいました。
普段お稽古でも先生がお濃茶を練られる事は滅多にないのですが、昨日は月釜の無事終了を慰労くださいまして、お点前頑張ってくださったAさん共々、手ずから濃茶からの続き薄でお点前してくださいました。先生の練られた濃茶は疲れた体に染み込むように本当に美味しかったです。特別美味しいお濃茶を頂きまた来月の月釜に向けて頑張ってまいります。
7月は19日(日)、①10時②12時半③15時の予定です。