先月の肥後古流江上大輔氏の素晴らしい特別茶会のあと、東京出張や三五夜の茶房の改装など慌ただしく日々が過ぎていきました。報告すべき事柄がいっぱいあるのですが、ブログが更新できておらずにもう今月の月釜の終了の報告となってしまいました(汗)。
先日、無事に終了した三五夜の卯月の月釜『藤浪の花は盛りになりにけり』。今回は奈良の新しいアーティストさんによる茶道具に新風を吹き込んでもらうお道具立てとなりました。 旅箪笥は奈良の切り絵作家さんの石賀 直之さん( @naoishiga )に桑木地の上に『藤』のモチーフで切り絵を制作してもらい乗せました。金に彩色した事もあり桑木地に截金のような素晴らしい作品となりました。千家の旅箪笥の薄茶点前では、芝点という旅箪笥の中板を薄茶器と茶筅の下に置き、屋外でお茶を点てる風情を楽しむ設えがありますが、中板にも石賀さんの美しい切り絵が施され、お点前の最中もお客様の目を楽しませてくださいました。石賀さんは最近茶の湯をはじめ日本の伝統文化を踏まえたデザインワークにも関心があり、ご自宅に眠っていたお茶道具に、お点前を教わりつつこのようにして作品として提案してもらいました。今後ともはいろいろなお道具に範囲を広げて、ご自身の世界観を表現したいとの事です。 なお石賀さんの作品展示が7月16日〜8月28日まで、平城宮跡いざない館であります。意欲的な作品が揃いますのでぜひともご覧になってください。
また本席床の掛物は、こちらも奈良でご活躍の万葉創作画家、Emiko Okuyamaさん( @emiko_okuyama )の新作『藤波の花は盛りになりにけり』の色紙をかけました。こちらは万葉集の大伴四綱の歌をもとに描いていただきました。万葉集の藤の歌は、当時奈良の都で隆盛を誇っていた藤原氏を喩えていると言うことですが、作者大伴四綱も太宰府に左遷された旧有力氏族の大伴氏である事からそのやりきれぬ想いを歌に読んだのかもしれません。この歌は巻三-329に収められていますが、その前の巻三-328がかの有名な『あおによし寧楽の京師はさく花の薫ふがごとく今盛りになり』という、藤原氏に近かった小野老の歌の後である事からも示唆的です。その事はまた、万葉歌にお詳しい奥山さんから解説を受けたいと思います。 その奥山永見古さんの万葉花展が4月22日(金)〜5月1日(日)まで、猿沢池畔の印伝「神楽」(奈良市今御門町23)で開催されます。つまみ細工の板持悟子( @satochan_37 )さんの可愛いつまみ細工と一緒です。
また、さらに今回は藤の趣向であった事から、薄茶の茶杓には奈良八景の一つ「南円堂の藤」を描いた塗りの茶杓を用いましたが、こちらは同じ堂後茶道教室の社中さんでもあるaさんが漆と金彩で描いた物です。aさんは仕覆や金継ぎなども手がけていらっしゃるなか何とも多芸ながら藤の趣向との事で使わせていただきました。 こうして皆さんのご協力のもと、今月の月釜も無事に終了する事ができました。お越しになってくださいましたお客様、並びにお道具を作成くださった石賀さん、奥山さん、aさんには改めて感謝いたします。
来月はいよいよ、三五夜の茶房改装工事も終わってそのお披露目も兼ねて5月29日(日)と30日(月)に月釜を開催いたします。ぜひ新しい茶房をご覧いただきたく思います。どうぞご参加くださいませ。