昨年好評であった古橋尚先生による白洲正子茶会。今年は第二回目として、開炉の特別茶会として、11月20~23日までの4日間無事に終えることができました。
上の仏像は、今回の席主である名古屋の古美術蒐集家であり陶芸家の古橋尚先生が、19歳な美大生の時に作られた陶器の仏像です。みずみずしい若さと純真無垢な雰囲気を醸し出すお顔立ちは、19歳の時に仏像と並んで撮られた先生のお写真の横顔から、半世紀過ぎた今のお顔立ちにも現れております。まだ陶芸家を目指す前に、一心不乱に作成された様子が目に浮かぶようです。
美しい物を見たい、触れたい、また作り出したいとの欲求が今の古橋先生を形成する主要な構成要素だとすると、白洲正子の美学に少しでも近づきたいとの欲求も当然であることかと思います。私がなぜ白洲正子にこれほどまで強く魅かれるのかを、本席に入る前の待合に展示された、白洲正子直筆原稿や著作で熱く語っていただきました。白洲正子と円地文子との対談で、奈良東大寺二月堂のお水取りの過去帳の読み上げで出てくる「青衣の女人」の事に触れていますが、待合の掛物からその青衣の女人かと想像を膨らませて、本席へ誘うところから、もう古橋ワールドでした。
お越しのお客様も約半数は、昨年の白洲正子茶会で古橋先生の白洲正子愛について魅力を感じた方々、それに昨年行かれずに残念に思っていた方が新しく加わり、その他、近畿圏内はもちろんの事、名古屋、東京、九州、そしてカナダから一時帰国中の語ってまでお越しくださいました。皆様、白洲正子及び旦那さんの白州次郎がお好きな方がで、さながら白洲正子同好会のような集まりの中、お茶会ではそこに、白洲正子の愛した奈良の歴史・仏教美術・工芸・風土を織り混ぜました。
本席のお軸にはこれまた奈良にゆかりの小堀遠州の中沼左京宛消息。遠州は近江国の生まれですが、父の小堀作介が大和大納言豊臣秀長の家臣であったため、少年期を大和郡山で育ちました。お茶に出会ったのも、また千利休・久保権大輔・松屋会記で有名な松屋三代に出会ったのも奈良であることから、茶人小堀遠州の故郷は奈良といっても過言ではありません。中沼左京は興福寺一条院の侍人で、奥さん同士が姉妹であり、小堀遠州と中沼左京は義理の兄弟となります。中沼左京の弟はかの有名な松花堂昭乗というところも興味深いですね。内容は、東福門院徳川和子(後水尾天皇の后)の住まう、御所の植木に関することが定家様の美しい書体で書かれています。古橋先生の古筆の師匠は、テレビ「なんでも鑑定団」に出演の増田孝先生で、小堀遠州の消息のの中でも、定家様で書かれた書状は公式の文書であり、また東福門院という高貴な方について書かれた書状というのは大変貴重であるとの事でした。
お濃茶には、京都蓬莱堂茶舗さんのの「都の昔」、お菓子は奈良の中西与三郎( @yosaburo__nakanishi )さんにに二上山をかたどった古橋先生が焼かれた銘々皿に山路を歩く中に見つけた残菊や黄葉を散らしたような金団、お干菓子には、やなぎのにわ京菓子店( @yana_niwa )さんに、白洲正子の随筆の一文から、奈良東大寺大仏殿裏の講堂跡の礎石と金箔の散華を散りばめたような麩焼き煎餅を、朱塗りの盆を紅葉の絨毯に見立てて作っていただきました。
即中斎好み台目棚の桐の唐紙を白洲邸の書斎の壁紙をイメージし、そこに明治期の加藤石春の『竜田錦』の水指を置き、修二会の松明で作られた炉縁に、大講堂釜と、お点前さん泣かせのお道具組みでしたが、今回も堂後茶道教室( @kibunegiku1008 )の皆様が日替りでお点前してくださいました。またお客様の多い休日二日には、11月27日(日)と12月11日(日)に2回にわたって、数奇屋袋の展示会と限定カフェを三五夜で開いてくださる鈴蘭の会のお二人( @yawn112 )( @emikitoemi )が、自主的にお手伝いいただきました。堂後先生はもちろんの事、ベテラン社中さんご夫妻も駆けつけてくださいました。ありがとうございました。なんとか無事に4日間を終える事がてきて、昨夜は片付け夜には古橋先生は名古屋に向けて出発、夜半に名古屋に無事に着いたとのご連絡がありホッと一息。本日はゆっくりと片付けをして、5回目のコロナ(オミクロン対応)2価ワクチンを接種してきました。第八波の惨状とはならずにホッとしましたが、人と出会うのがこのお仕事ですので、行政の素早い対応に感謝です。
この度もお越しいただきました、多くのお客様から、『大変面白かった・よかったです」とのお言葉をいただきました。お越しくださいました皆様、改めてお礼申し上げます。名古屋から多くのお道具、そして今回は、10日前に焼きあがった先生のお茶碗や向付にも使える器の展示販売もしていただきありがとうございました。お茶、お菓子をご提供いただきました皆様、堂後先生及び堂後茶道教室の皆様ありがとうございました。