三月の最終日である31日の日曜日、姫路市のある「姫路文学館」にて”GALLERYとーく“さんの主催する「みせばやな 華」茶会で煎茶席を担当しました。

”GALLERYとーく”の大橋さんとは、「年中行事を愉しむ会」を主宰する嘉集庵さんを通じて知り合い、姫路で開催する茶会の中で煎茶席をうけもって欲しいとのご依頼を昨年いただきました。今年は姫路の前に2月10日に三五夜からほど近い「奈良町にぎわいの家」の離れでも煎茶席を設えましたので、2か月連続となりましたが、その前は東京府中市でのお茶会でした(令和4年9月)ので、およそ1年半ぶりとなりました。

煎茶席はその主室である18畳に設けられました。庭に面して高欄が廻らされ天井も高く立派です。当日は二方に障子と取り払い、外側にガラス戸を開け放ち煎茶席らしく明るく開放的に使いました。
姫路城の日隣り姫路文学館の別館の旧濱本邸は姫路の実業家濱本八治郎が大正時代に建てた邸宅で国の登録有形文化財でもあります。戦前には旧皇族の賀陽宮が姫路に滞在の折にはその居住所としてももちいられた豪壮な和風建築です。
主室の床の間は使用不可のため、鴨居に黄檗山万福寺の大正期の管長直翁(しょくおう)筆の「江国春風」を掛けました。播州の気候の穏やかのところと、瀬戸内海の一部である波の穏やかな播磨灘を長江下流域の江南地方の春の景色と擬えました。
江國春風吹不起(江国の春風吹きたたず)
鷓鴣啼在深花裏(鷓鴣啼いて深花裏にあり)
三級浪高魚化龍(三級の浪高うして魚龍と化す)
癡人猶戽夜塘水(癡人なお汲む夜塘の水) 『碧巌録』第七則頌

使った棚も杭州棚という中国風なもの、煎茶道具も白磁や金襴手・銀欄手、染付など中国趣味に溢れたものを使い、明代の官服に冠を付けて、中国文化に憧憬をもった日本の文人遊びとしての煎茶席にしました。和室の細部にも中国的なモチーフが施されていたので、お部屋と非常にマッチしました。

本来なら一亭五名までを佳しとするので一亭10名以上とは、お手前としはかなり無理があったのですが、春の風光明媚な景色のなかで煎茶の雰囲気を味わって頂けたのではないかと思います。




お菓子はいつもお世話になっている「やなぎのにわ京菓子店」さんに、三五夜のイメージで、黄色のおぼろ煎餅(白餡に木の芽入り)、生姜味の寒氷(すり琥珀)を蝶の型にして根来塗の手力盆に盛りました。

今回の「みせばやな 華」茶会は、抹茶(薄茶)席・点心席もあり、抹茶席の方は茶室「雄徳庵」で、ガラス作家の奥島圭二さんが、ご自身作のガラスの茶道具を用いて担当されました。また、各席のお花と室礼は「年中行事を愉しむ会」を明石で主宰する嘉集庵さんが担当されました。






多くの方がお水屋および裏方として入ってくださりご協力いただいたおかげで、桜の満開にはあと一歩のところでしたが長閑な春の陽気に恵まれ、華やかな会を無事終える事ができました。
お越しいただきましたお客様、主催者のGALLLERYとーく大橋さん、一緒に席を担当された奥島さん、嘉集庵さん、スタッフさん有難うございました。
当日の撮影に入っていただいた写真家の白浜久美子さんから、沢山写真をいただきましたので使わせていただきます。
